解決できるお悩み
- 初めてアパート経営をやりたいんだけど「利回り」ってどうやって計算するの?
- 初めてのアパート経営、失敗しない利回りの目安ってどれくらい?
- 利回りさえ把握しておけばアパート経営は大丈夫?
利回りっていろいろ種類があるみたいだけどどれを目安にすれば良いの?
・この記事で紹介する「表面利回り」と「実質利回り」を自分で計算できるようになれば、アパート購入が
初めての方でも、「失敗しない物件選び」ができるようになりますよ!
・なぜなら、僕は30年間、大手住宅メーカーに勤務し賃貸住宅経営のコンサル一筋でやってきましたが、
この記事で説明する「利回り」をクライアントの方に自分で計算してもらうことから始めて頂いた結果
アパート経営に失敗した方は一人もいなかったからです。
・この記事を読むことで、「利回り」計算を自分でできるようになりますが、同時にアパート経営をする上
で「絶対に押さえておきたいポイント」も理解することができるようになります。アパート経営の基礎中
の基礎である「利回り」をこの記事を読んでしっかり理解して頂いて、安全なアパート経営をスタート
させましょう!
アパート経営の利回りとは
1.アパート経営の利回りとは?
アパート経営の利回りとは、アパート建築費や購入費などの「投資額」に対して、どのくらいの「手残り」が
あるのかを数値化したものです。
利回りには「想定利回り」、「表面利回り」、「実質利回り」の3種類がありますが、今後アパート経営を
していく上では、「表面利回り」と「実質利回り」に着目するようにしましょう!
・定義1:想定利回り
→想定利回りの定義と計算方法
「想定利回り」とは、「物件の取得価格に対して、満室状態での年間の家賃収入の割合がいくらかを
したもの」です。
(計算式)
想定利回り(%) = 満室の年間賃料収入 ÷ 物件取得価格 × 100
不動産業者さんや建築業者さんが、口頭ベースで利回りをいう時は、大抵この「想定利回り」を言
ってることが多いようです。
・定義2:表面利回り
→表面利回りの定義と計算方法
「表面利回り」とは、「物件の取得価格に対して、空室状況を加味した年間の家賃収入の割合がいくらか
を表したもの」です。
(計算式)
表面利回り(%)= 空室を加味した年間賃料収入 ÷物件取得価格 × 100
アパート経営が常に満室という状況は想定しにくい為、物件選びの入口では、この「表面利回り」
を参考にして良かもしれませんが 実際にアパート経営をする為には経費も支払っていかなけれ
ばならないので、表面利回りだけで物件を決定することは避けましょう!
・定義3:実質利回り
→実質利回りの定義と計算方法
「実質利回り」とは、「物件の取得価格(建築費や購入費)に諸経費を足した額に対して、空室状況を
加味した年間賃料収入から経営にかかるランニングコストを差し引いた額の割合を表したもの」です。
(計算式)
実質利回り(%)=(空室を加味した年間賃料収入ー年間のランニングコスト)÷(物件の取得価格
+取得時の諸経費)× 100
アパート経営初心者が、利回りにおいて最も着目したいのがこの「実質利回り」です。
取得時の諸経費や経営時ランニングコストは簡単には正確な数字を算出できない為、実質利回りが
把握できないことも多いようです。この記事では、自分で簡単に算出できる方法をお伝えしますね!
(正確な諸経費の求め方は、また別の記事でご説明しますね!)。
ポイント
(第1章まとめ)
・利回りは、あくまで『アパート経営をするべきか否かを判断する為の指標』であって、その物件からの収益性を示したのではない事を理解して下さい。
・アパートを建築もしくは物件を購入する時は、「表面利回り」と「実質利回り」を指標として下さいね!
利回りの目安〜物件選定時の最低ラインの検討
2.アパート経営を始めようとする時の「最低でも確保したい利回り」ってどれくらい?
アパートを建築もしくは物件を購入する時の利回り最低ラインは条件によって変化することを
まず理解してさい。少なくとも「土地購入有無」、「立地」、「築年数」、「構造」によって
変化しますので、利回り数字だけにとらわれず、これらの要素を加味して検討しないと誤った
アパート経営をしてしまうことになるので注意が必要です。
それでは、みていきましょう!
・土地購入の有無
土地を購入してその土地にアパートを建築したり、新築の建売物件(新築アパート付不動産のこと)
を購入するのは、元々所有している土地にアパート建築する場合と比べて、投資額が大きくなること
は容易に想像がつきますよね(土地代金が余計にかかる)!
都心の駅近物件となれば尚更です。このような物件であっても最低限クリアーしておきたい利回り
の目安をみておきましょう!
<新たに購入した土地にアパートを新築した場合の最低限クリアーしたい利回り>
- 「最低でもクリアーしておきたい表面利回り」= 4.5%
- 「最低でもクリアーしておきたい実質利回り」= 3.0%
誰しも「駅近の物件」や「利便性の高い物件」をできる限り適正な価格で求めたくなりますが、
ここで申し上げたいことは、どのような場合であってもこの利回りは確保したいということです。
僕も、本業(不動産コンサル)で東京都中央区銀座とかの案件にも何度か携わりましたが、どんなに
土地値が高くてもクライアントにお勧めする案件は、最低でも上記の利回りクリアーしすることを条件
にしていました(利回りを確保できるだけの自己資金を用意して頂く等)。
<元々所有していた土地にアパートを新築した場合の最低クリアーしたい利回り>
- 「最低でもクリアーしておきたい表面利回り」= 9.0%
- 「最低でもクリアーしておきたい実質利回り」= 8.0%
アパートを所有地に建築する時の利回り目安は上記の通りですね。できれば10%以上の利回りを
目指していきたいところです。
・立地
立地によっても利回りは大きく変わります。覚えておいて頂きたいのは
- 「都心や駅近」に近くなるほど(土地値が高くなる)利回りは悪くなる
- 「都心や駅」から離れるほど(土地値が安くなる)利回りは良くなる
では、「都心や駅から離れた物件を求めた方が良いのか」というとそうとは限りませんよ!
土地を購入してアパート経営をするのであれば、まず「駅徒歩10分圏内の土地」から探して
いきましょう。利回りがいからといって徒歩30分の土地を狙ってはいけませんよ!
入居者の方が住んでくれなければアパート経営は破綻しますから!
安全なアパート経営を考えるなら「都心の最低でも駅から徒歩15分以内できれば10分以内の物件」
を選びましょう。それ以外の物件は検索対象から外していきます!
参考
中古の一戸建て住宅については、少し違った考え方ができると思います! これについては
別の記事にまとめますね!
・築年数
築年数によっても利回りは変動します。
一般的には、
- 築年数が短いほど利回りは悪くなる。
- 築年数が長いほど利回りは良くなる。
ということ。!
では、利回りの良い「築年数の長い物件」を購入して良いのかというと、やはりここでもそうでは
ありません。
利回りとは別にキャッシュフローを考えた時に、築年数が長すぎると借入れで物件購入資金の手当を
する場合、融資期間が短くなり、毎年のキャッシュフローが赤字になることにもなりかねませんよ!
安全なアパート経営を考えるなら「都心の最低でも築15年以内できれば10年以内の新築の物件」を
選びましょう!
それ以外の物件は検索対象からは外していきます!
・構造
構造によっても利回りは変動します。
一般的には
「木造」>「軽量鉄骨造」>「鉄骨造」>「鉄筋コンクリート造」
の順番で利回りは悪くなります(木造が一番良いということ)。
では、利回りの良い「木造の物件」を選べば良いのかというと、やはり全てがそうとは言えません。
上記と同じく、構造により融資期間の年数が変動するため、借入れで資金を手当する場合、
キャッシュフローが大きく変動します。いくら利回りが良くても毎月のキャッシュフローが持ち出し
では何の為のアパート経営かわかりませんよね!
安全なアパート経営を考えるなら
「都心の物件でなるべく耐用年数が20年以上残っている物件」を選びましょう。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造は、耐用年数が47〜30年と長いので築10〜15年の物件でも
融資期間が20年以上とることも可能になってきます。
構造は築年数にも連動しますし、リセールバリューにも影響するので慎重に選びましょう!
参考
*鉄筋コンクリート造や鉄骨造は、「将来解体する時の金額が高い」ということもありますが、
将来の解体のことを考えるよりも、まず直近のアパート経営から考えていきましょうね。
ポイント
(第2章まとめ)
①アパート経営をする土地は「最低でも都心の駅から徒歩15分圏内の物件」を選定しましょう!
②アパート経営をする場合は「できれば新築、購入する場合は最低でも築15年以内の物件」を選定
しましょう!
③アパート経営を有利にしたい場合は
「できれば(鉄筋コンクリート造)>(鉄骨造)>(軽量鉄骨造)>(木造)」
という順番で選定しましょう!
以上を踏まえた上で
(土地有りの場合の最低クリアーしたい利回り)= 「表面利回り:9.0%」 『実質利回り:8.0%」
(土地なしの場合の最低クリアーしたい利回り)= 「表面利回り:4.5%」 『実質利回り:3.0%」
を目指しましょう!
利回りの計算方法〜具体的には、どうやって計算するの?〜
3.利回りを簡単に計算する方法
利回りの計算式は第1章で説明しましたが、実際に計算する為には「賃料収入」以外「空室率」、
「年間のランニングコスト」、「物件取得費」、「物件取得時に発生する創業経費」がどれくらいか
かるのかを理解する必要があります。この章では、簡単に素早く利回を把握する為の「本当に簡単な
求め方」をご紹介します。
正確な求め方は、また別の記事でご紹介しますね。この記事の主題は、購入すべきか否かを素早く
判断する為に「簡単に物件の利回りを把握する」ことが主眼なので、「大まかな判断基準」として
ぜひ参考にしてみてくださいね!
・賃料収入
→年間賃料収入利回り計算をする際の「賃料収入」とは、貸部屋、貸事務所、貸店舗、
駐車場などの賃貸収入の年間合計額のことです。共益費が発生する場合、その共益費も
含みます。
(例1) 1K 6世帯 駐車場 2台
1K 家賃:70,000円/戸 共益費 3,000円/戸 駐車代金 7,000円/台
この場合の年間賃料収入は
(70,000円 + 3,000円) × 6(戸)× 12(年) = 5,256,000円
(7,000円 × 2台) × 12(年) = 168,000円
5,256,000円 + 168,000円 = 5,424,000円
この例の場合、諸々の利回り計算の元になる「賃料収入」は5,424,000円になります。
・空室率 →15〜20%
物件を購入する際に、購入しようとしている地域の「空室率」は必ず抑えておきましょう。
購入しようとしている物件が、都内主要駅徒歩1分とかの物件であれば心配はないかもしれません
が、一般的には購入した物件が常に満室ということはなかなかあり得ません。
現在、空室率は全国平均で18.2%、東京都で13.4%です(2020年9月現在/(株)TAS
賃貸住宅市場指標)。統計値として発表されている空室率は、各エリアの平均値として捉えて下さ
い。空室率は「駅距離」、「設備」、「構造」、「管理形態」などによって左右されますが、物件
購入を検討する際の利回りを計算する段階では、最低でも「15%」として計算しましょう!
将来的な賃料の下落率まで勘案すると「20%」で計算した場合の利回りも把握しておいた方がベ
ターですよ!
・年間のランニングコスト
「ランニングコスト」とは経営開始後のローン以外にかかるお金(賃料収入の25%)
のことです。
アパート経営は、「収入金額(賃料)」から「支出(月々の返済+ランニングコスト)」を
差し引いた残りが実際の手取り収入になります。
「ランニングコスト」とは、賃貸アパートを経営していく為の費用ですが、具体的には
以下のようなもが該当します。
- 公租公課(固定資産税・都市計画税・償却資産税・事業税)
- 管理委託費(不動産管理会社への管理費及び共用部メンテナンス等の施設管理費)
- 修繕費(経年劣化部位対応工事費や入退去時の現状復旧工事費)
- その他(広告費、事務費、共用部水道光熱費、税理士費など)
それぞれの項目についての計算式については別の記事に譲りますが、物件購入を検討する際の
利回りを計算する段階では、これらを合計して「賃料収入の25%」程度として計算して下さい。
・物件の取得価格
→土地有りか無しかによって変化します。
物件の取得価格は「土地有り(元々土地は所有している)」と「土地無し(土地も新規に購入
する、若しくは土地+建者を購入する)」のかによって分かれます。
- 「土地有りの場合」⇨ 建築する建物金額(消費税込)
- 「土地無しの場合」⇨ 建築する建物or土地付建物(消費税込)+土地代金
となります。土地には消費税は課税されないので注意して下さいね!
・物件取得時の創業経費
「創業経費」とは、物件取得時費で最初1回だけ掛かる経費(物件購入費の8〜10%)
アパートを購入する際は、その土地建物の価格だけではなく様々な費用が掛かります。
この経費は、創業時の1回だ必要となる費用なので「創業経費」と呼ばれます。
創業時経費には、以下のようなものがあります。
- 税金関係(不動産取得税・登録免許税・印紙税・精算時の日割固定資産税、都市計画税)
- ローン関係(ローン保証料・事務手数料・工事期間中金利)
- 登記関係(所有権移転登記・表題登記・所有権保存登記・抵当権設定登記)
- 保険関係(火災保険・地震保険・施設賠償保険)
- 測量関係(現地調査費・地盤調査費)
- 不動産仲介手数料
- その他(負担金関係・近隣対策費・式典費用/これらは建築の場合)
土地を取得するのか元からの所有地か、建物を更地から新たに建てるのかによって変化しますが、
物件購入を検討する際の利回りを計算する段階では「物件購入費の8〜10%」程度を見込んで計算
して下さい!
では、実際に利回りを計算してみましょう! (例1)を少しアレンジしてみます。
(例2) 東京近郊都市をイメージします。
・土地 60坪 5400万円(90万円/坪)
・建物 新たに建築 木造 1K 6世帯 5280万円(税込)
・賃料 1K 家賃:70,000円/戸 共益費 3,000円/戸 駐車代金 7,000円/台
年間賃料収入 542万4000円
・想定利回り
542万4000円 ÷ (5400万円+5280万円) = 5.07%
・表面利回り
542万4000円 ×(1 - 15%(空室率))= 461万400円
461万400円 ÷ (5400万円+5280万円) = 4.31%
・実質利回り
542万4000円 ×(1 - 15%)- (542万4000円 × 25%) = 325万4400円
325万4400円 ÷ {5400万円+5280万円+(1億680万円×8%)= 2.82%
(例2)の利回り計算の結果、第1章の目安と比較してみると
表面利回り
・ 4.31% < 4.5%
実質利回り
・ 2.82% < 3.0%
という結果になりました。
購入判断としては、「要検討!」というところだと思います。
購入資金を全て現金で手当できれば、経営リスクは減少しますが、ローンで資金手当を考えている
場合には、この例で行けば、実質利回りの利益(325万4400円)からローンの返済をしてい
くので、実際の手取り収入はかなり厳しくなりますよね!
メモ
実際に1億680万円を金利1%、30年返済で全額アパートローンで資金手当したとすると
毎月の返済額=約34万円、年間の返済額=約408万円となり、年間のキャッシュフローは
約75万円の赤字になってしまいます。
この物件を本当に購入する場合には、土地価格や建築費の減額交渉等を試してみる必要が
ありますね。
まとめ
・アパート経営の利回りとは 「表面利回り(物件価格に対する空室を加味した年間の家賃収入の
割合)」と「実質利回り(『物件価格+諸経費』に対する『空室を加味した年間の家賃収入ー
ランニングコスト』の割合」を把握しましよう。
・物件を選ぶ時の最低限クリアーしておきたい利回りの目安とは 元々所有していた土地に建物を
建築する場合の最低限クリアーしたい利回りは「表面利回り=9.0% 実質利回り=8.0%」、
購入した土地に建物を建築する場合の最低限クリアーしたい利回りは「表面利回り=4.5%
実質利回り=3.0%」を目安としましょう。
・アパート経営すべき土地と建物とは アパート経営の為に土地を購入する場合は「都心の駅から
徒歩15分圏内」の土地を選びましょう。アパート経営の為に建物を購入する場合は「できれば
新築、最低でも築15年以内の物件」を選びましょう。